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地域密着 愛されご当地パン

スポンジケーキの中は……なんと食パン!? 鹿児島県姶良市の「スナックブレッド」

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地域で愛されているパンを探して、全国各地をゆく「地域密着 愛されご当地パン」。今回は、“外はスポンジケーキ、中は食パン”という一風変わったパンがあると聞いて、鹿児島県姶良市の「イケダパン」を訪問しました。

鹿児島県姶良市にあるイケダパンの工場。

JR重富駅から車で5分ほどのところにある、イケダパンの工場。

鹿児島、宮崎、大分を中心に九州各県で卸売りをしている、1948(昭和23)年創業のイケダパン。洋菓子や和菓子の他、チョコレートをたっぷり塗ったコッペパンにチョコレートクリームをサンドした「キングチョコ」や、ようかんをコーティングした満月形の「ラビットパン」など、菓子パンを中心に親しまれています。

その中でひときわ異彩を放つパンが「スナックブレッド」で、地元では30年以上も親しまれているんだとか。“スポンジで食パンをロールイン!”というキャッチコピーがつけられたパンの姿をいざ拝見!

イケダパンのスナックブレッド

「スナックブレッド」。127円(税抜)。

スポンジケーキの中にあるのはクリーム……ではなく、食パン。まさに、キャッチフレーズ通りのパンでした。スポンジケーキと食パンはそれぞれなじみのある食材ですが、組み合わせているのは見たことがありません。“生地×生地の融合”は、一体どんなハーモニーを奏でてくれるのでしょうか……。

一口頬張ると、その相性の良さにびっくり! ほんのり甘いスポンジケーキと、適度に塩気のある食パンは、絶妙なバランスでお互いを引き立てています。さらに、口の中に広がるのがマーガリンの風味。スポンジケーキと食パンの間に塗られたマーガリンのコクと香りが、両者のうまみをより感じさせます。

スポンジケーキはふわっと食パンはもっちりした食感。どちらもしっとりしていて、かつマーガリンがじゅわっと広がるので、フレンチトーストを食べているような気分になりました。

「全体的にやさしい味わいで重たくないので、地元では“朝食の定番”として召し上がる方もいらっしゃいますよ。トーストすると、表面にサクッとした食感が加わり、一層おいしくいただけます」と、イケダパンで企画担当を行っている有元楼さん。

菓子パンですが、朝の食卓でも活躍できるパンだとは驚きです!

◼食パンをロールインしたワケ

“食パンをスポンジケーキで巻く”という新発想。なかなか思いつかないと思いますが、どのように生まれたのでしょうか?

有元さん「弊社では、『ロールケーキ』も製造していますが、その製造ラインの稼働率が低いことに悩んでいる時期がありました。そこで、売り上げが比較的安定しているパンと組み合わせることで、稼働率をアップできるのはと思い、1987年(昭和62)年に誕生したのがスナックブレッドなんです。その結果、1日の稼働率が3時間ほど上がり、売り上げは無事アップしました。ロールケーキと同じ製造ラインでなかったら、スナックブレッドはこんな形じゃなかったかもしれませんね(笑)」

イケダパンの切れてるロールケーキ

ロールケーキ部門で作られている「切れてるロールケーキ(いちご)」。120円(税抜)。

経営上の都合により、ロールケーキ仕立てで作られることになったパン。開発当時は、食パンとスポンジケーキはそれぞれ既製品を使って試作していたそうですが、「おいしさ」「巻きやすさ」を追求するためにオリジナルのものを開発したんだとか。

有元さん「まずスポンジケーキは、舌触りを良くするためにきめを細かく、巻きやすいようにしっとりさせています。食パンは、スポンジケーキの甘みと調和させるために、塩気を出しています。両者をしっかり合体させるため、接着剤代わりにマーガリンを使用。これは、味の決め手でもあります」

製造は基本的に機械で行うそうですが、スポンジケーキで食パンを巻くステップは手作業。“手巻き”にこだわるワケとは?

有元さん「スポンジケーキは、やわらかくて崩れやすいので、慎重な扱いが必要です。しかし、きちんと食パンを巻くには、ほどよい力も必要。そのため、スタッフが長年かけて体得した力加減で、1日300本ほど巻いています」

スポンジケーキ「で食パンを巻く前

マーガリンをまんべんなく塗ったシート状のスポンジケーキで、直方体の食パンを……。

スポンジケーキで食パンを巻いているところ

ロールイン! わずか5秒ほどの早業です。

カットされたスナックブレッド

1本につき、約8個のスナックブレッドができあがります。

誕生当初から、市民御用達のスーパーマーケットで取り扱われていたことで、じわじわとその名が広がり、おなじみの菓子パンとして定着していったそう。

そして、2010年に全国でオンエアされたテレビ番組が火付け役となり、県外からも注目されるようになったといいます。

有元さん「スポンジケーキと食パンはなじみのない組み合わせだと思いますが、『飽きのこないようで、はまった!』というお客さまの声をよく聞きます。また中には、食パンがクリームに見え、『これ、ロールケーキじゃないの?』と興味本位で購入し、リピーターになる方もいらっしゃいますよ」

◼スナックブレッドに姉妹品が登場!

そんなスナックブレッドに、2018年2月から新作が仲間入りしました。

イケダパンのスナックブレッド_レーズン

カリフォルニア産レーズンを使用した「スナックブレッド(レーズン)」。127円(税抜)。

従来のスナックブレッドとは異なる、ややハードな食感の食パンが特徴。甘酸っぱいレーズンは、良いアクセントになっています。

イケダパンの有元さん。

「2月から新作スナックブレッドを含む200品を対象にしたプレゼントキャンペーンを実施中です」と有元さん。

有元さん「弊社商品は品質保持のため、九州以外での販売・発送は行っておりません。この地域の方により楽しんでいただくため、今後は、地元ならではの商品開発を予定しています。例えば、宮崎発祥のご当地パン『ジャリパン』の“ジャリクリーム(グラニュー糖を混ぜたクリーム)”を参考にさせていただき、“シュガーマーガリン”を使ったスナックブレッドを作ってみたいと思っています」

南九州のスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで取り扱われているスナックブレッド。鹿児島は、錦江湾に浮かぶ「桜島」や、今年1月から放送開始した大河ドラマのロケ地でもある「仙巌園」などの絶景スポットが豊富な場所。観光に訪れた際は、ぜひ意外なコラボを味わってみてくださいね。

  • 店舗情報 ●イケダパン
    住所:鹿児島県姶良市平松5000番
    電話:0995-65-8611
    公式HP:http://www.ikedapan.co.jp

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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